民間企業では副業を行っている人、副業を考えている人の割合が5割を超えたといわれているほど、副業は当たり前の時代となっています。
しかし、公務員は国民への奉仕が仕事であるため副業が認められていないですよね。
過去には副業に手を出して懲戒処分を受けた公務員も少なくない程です。
時代の流れの変化と共に、平成29年には兵庫県神戸市と奈良県生駒市が公務員の副業を認めました。
その流れは全国に広がる可能性はあるものの、今の段階では副業は禁止です。
では、公務員では一切副業は何もできないのでしょうか?
実は一部の副業は事前に許可申請を出せば公務員でも行えるものがあるのです。それはどんな副業でしょうか?
要許可申請の根拠となる法令とは?
国家公務員には「国家公務員法」、地方公務員には「地方公務員法」という法令の中で、公務員が副業をするにあたって許可申請の届出を行う根拠法令が出ています。
国家公務員の場合
国家公務員法の第一〇三条及び第一〇四条に公務員の副業許可申請について記載されています。
『(私企業からの隔離)第一〇三条 職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。
2前項の規定は、人事院規則の定めるところにより、所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た場合には、これを適用しない。(他の事業又は事務の関与制限)
第一〇四条 職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。』
(国家公務員法より引用)
とあります。
この中の、具体的には
- 「所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た場合には、これを適用しない。(第一〇三条2)」
- 「内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。(第一〇四条)」
のところです。
内閣総理大臣の許可というのは一公務員では現実的ではないので、所轄庁長の許可あればできる副業ができるということですね。
地方公務員の場合
では、地方公務員の場合はどうでしょうか?地方公務員法を見てみましょう。
(営利企業等の従事制限)
『第三八条 職員は、任命権者の許可を受けなければ、営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利を目的とする私企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。
2人事委員会は、人事委員会規則により前項の場合における任命権者の許可の基準を定めることができる。』
(地方公務員法より引用)
とあります。
最後に記載されているとおり、「任命権者の許可の基準を定めることができる。」と明記されているわけです。
公務員が遵守しなければいけない3大義務
上記の通り、許可申請を出せば公務員でも副業ができることが分かりました。
では、どんな職種でも公務員であっても許可申請さえ出せば行うことができるのでしょうか?
実はそうではありません。
国家公務員法、地方公務員法にはそれぞれこのような記載があります。
『第九九条 職員は、その官職の信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。(信用失墜行為の禁止)
第一〇〇条 職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。(秘密を守る義務)
第一〇一条 職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、政府がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、官職を兼ねてはならない。職員は、官職を兼ねる場合においても、それに対して給与を受けてはならない。(職務に専念する義務)』
(国家公務員法より引用)
『第三三条 職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。(信用失墜行為の禁止)
第三四条 職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする。(秘密を守る義務)
第三五条 職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。(職務に専念する義務)』
(地方公務員法より引用)
とあり、国家公務員も地方公務員も
- 信用失墜行為の禁止
- 秘密を守る義務
- 職務に専念する義務
以上の3大義務を遵守しなければいけないません。
そのため、許可申請でどんな職種の副業でもできるわけではありません。
では、許可申請をすることで公務員ができる副業はどんなものがあるのでしょうか?
公務員が許可申請を提出することでできる副業
- 不動産投資(※4棟以下の賃貸など小規模の場合は許可不要)
- 太陽光発電(※10kW未満なら許可不要)
- 執筆活動、講演
- 家事手伝い
- 公益的活動(サッカーや野球のコーチ、有償ボランティア)
- 農業(※大規模農業は兼業不可)
となっています。
公務員はやはり国民の税金をもらって働いている公僕のため、
- 公務員としての業務と兼業との間に特別な利害関係の発生の恐れがないこと
- 兼業によって本業に支障が生じないこと
- 公務の公正性及び信頼性の確保に支障が生じないこと
以上の、公務員としても大前提を侵さない副業なら許可申請すれば始められます。
では、公務員は許可申請を出さないと副業はできないのでしょうか?
届け出しなくても始められる副業6選
正直グレーゾーンなところもありますが、以下のものは許可申請しなくても副業を行えます。
- クラウドソーシング
- アフィリエイト(ブログ、YouTube(YouTuber)、メルマガ配信など)
- 転売ビジネス(せどりなど)
- 小規模不動産投資
- 小規模太陽光発電(10kW未満)
- 資金運用(株式投資、FX、仮想通貨取引など)
となっています。
ただし、本人名義で転売ビジネス(せどり)をするのはNGですし、
小規模不動産投資は
- 4棟以下の賃貸
- 9室以下の部屋の賃貸マンション
- 9件以上の土地の賃貸
- 駐車台数9台以下の建築物である駐車場または機械設備がない駐車場の賃貸
- もしくは、賃貸収入が年間500万円未満の不動産または駐車場の賃貸
と、細かく制限が決まっているので副業を始める前に注意が必要です。
届け出なしでも副業可能な6選の中でも特に注目されているのが「クラウドソーシング」です。
クラウドソーシングとは、仕事を発注したい企業や個人(クライアント)と仕事を受注したいワーカーを結びつけるマッチングサイトで、さまざまなインターネットビジネスがあります。
CrowdWorksやランサーズはクラウドソーシングを提供している大手サイトです。
副業の許可申請が必要な「執筆活動」に該当する可能性がゼロではありませんが、
ライターとしてよほど有名にならない限りネットビジネスのため匿名性が高く、公務員だとバレることはまずありません。
クラウドソーシングにはライターだけでなくさまざまな職種が存在しているので、
本業に支障がない程度に副業を行いたい場合どれくらいできるかなど探り探りにやってみたい場合にもおすすめです。
まとめ
今回は、「公務員が副業をするために許可申請は必要か?申請不要な副業とは?」をテーマにお届けしました。
公務員であっても合法的に副業ができるものも少なくないですね。
月に1万円でも2万円でも副収入が得られればお小遣いもアップでき、日々の潤いも生まれてくるものではないでしょうか?
空いている時間を有効活用して、副業でお小遣いアップを目指しましょう。