フィリピンは東南アジアでも経済成長が顕著な国の一つとして、別名「ライジングスター」と呼ばれるほど世界各国からの注目度が増している国です。
インフラ整備も着々と進んでおり、マニラ首都圏ではコンドミニアム価格の上昇が続き、高い利回りを記録して不動産への投資人気も継続中です。
海外や日本からも多くの投資があり、不動産価格の上昇率も過去5年で70%を超えています。(Global Property Guide調べ)
そこで今回は、著しく成長するフィリピンで不動産運用を始めるノウハウを解説します。
①フィリピンの不動産運用事情
フィリピンは他の東南アジア諸国と同じように外国人が不動産を運用する事に厳しい規制があり、コンドミニアムなど一部の物件しか購入できません。
その為に、事前に外国人が購入可能な不動産かどうかを確認する情報収集が欠かせません。
不動産の外国人規制を忘れずに
フィリピンでは、外国人投資家は建物を購入できても土地を購入する事は出来ず、
登記可能なコンドミニアムの購入が現実的な不動産運用です。
さらに、コンドミニアムの賃貸・及び転売も同じ外国人相手にしか出来ません。
ですので、外国人がほとんどいない場所に不動産を持っても運用も転売もできないので、
新築物件の建設契約や実際の外国人需要がどの程度あるかも調査が必要です。
押さえておきたいフィリピンの税制
フィリピンで不動産を取得した場合にも当然税金が掛かります。
その税金も、海外の場合には急に変更される事があるので確認が必要です。
キャピタルゲインの利益を超える税金を取られてしまうと、何のために不動産運用をしたのか分からなくなるからです。
なお、現時点でフィリピンのコンドミニアム購入にかかる税金は2018年4月時点では下記の通りです。
- 印紙税:(購入価格或いは市場価格でいずれか高い方に対して)1,5%
- 地方譲渡税:(物件価格又は市場価格の)0,5~0,75%
- 不動産収入税:賃貸収入の25%
- 公証費用:(市場価格の)1~2%
- キャピタルゲイン税:物件価格あるいは市場価格の6%
- 不動産仲介手数料:物件価格の3~5%
※最新の税制については、外務省のサイトやフィリピン政府サイトから確認して下さい。
②フィリピン不動産運用計画の立て方
フィリピンでの不動産投資では中古物件を購入運用する事も出来ますが、中古市場が十分に確立していません。
なので、ブローカーを仲介したり、物件オーナーと直接取引するしかなく、
フィリピンの事情に慣れていないと詐欺に遭うなど、優良な中古物件の購入は難しいのが現実です。
このためフィリピンでの不動産運用では、プレビルド(完成前物件の購入)のコンドミニアムを購入するのが主流です。
フィリピンの現地銀行利用時の留意点
プレビルド方式で物件を購入する場合は、頭金を何度かに分割して支払い、分割支払い終了後に残金を一括で支払います。
すべて現金で行うなら問題ありませんが、現地銀行でローン融資を受けての一括払いには注意が必要です。
というのも、フィリピンの経済状況によってはコンドミニアムの担保価値が落ち、購入時に融資が下りるはずの銀行ローンが組めなくなる危険もあるからです。
プレビルド方式では残金を支払えないと、それまでに支出したお金が没収される可能性もあります。
実際にはバイヤー(買い手)保護の法律で、デベロッパー(不動産開発)は支払った頭金の半額を返還する決まりがありますが、
現地で弁護士を雇って交渉しないといけないなど手間と時間と費用がかかります。
このようなケースも起こりうるのでフィリピンで不動産を運用する際には二重三重のリスクヘッジ計画を立てておきましょう。
フィリピンの銀行ローン金利は2種類
フィリピンの銀行ローン金利は、
例えば、東京支店や名古屋出張所があるPNB(PHILIPPINE NATIONAL BANK)の場合は5,95%です。
(内訳、固定金利5%+みずほ銀行の長期プライムレート0,95%)
PNBの住宅ローンは返済ができなくなっても最後まで借入金の返済義務を負うリコースローンという種類ですが、他の銀行だとノンリコースローンを組む事が出来ます。
ノンリコースローンは金利が高いかわりに、担保となる物件を手放しても返済できない分の借入金は銀行が負担する、借り手に有利な住宅ローンです。
ただ、メリットはあるのですが融資条件として
- SRRVビザ(リタイヤメントビザ)
- クオータビザ(特別割当移住査証)
を取得していないといけないなど、審査基準が厳しくなっています。
③確実に利益を出す出口戦略を考えてから始める
フィリピンの不動産市場の特徴と資金融資の計画などを確認した後は、最終的に利益を出して不動産運用を終わるまでの出口戦略を考えます。
ここを疎かにすると売るべき時に建物が売れず収益が得られない恐れもあるからです。
フィリピン不動産では家賃収入より転売差益を狙うのが正解
フィリピンで不動産運用の利益を出すには、転売によるキャピタルゲイン(不動産転売)が狙い目です。
その理由はフィリピンでは賃貸管理を行う会社があまりなく、
コンドミニアムの賃貸管理はほとんどデベロッパーの賃貸管理部門が請け負っています。
家賃設定も管理部門の担当で、入居希望者はコンドミニアムごとに用意されている管理部門から直接賃貸募集リストを入手しているからです。
このような事情から管理部門は、家賃を下げるとコンドミニアムの格が下がるとして、空室があっても家賃を下げません。
そこで、物件の空室に悩むコンドミニアムオーナーは別に賃貸管理をしている会社を探して管理を任す状態であり、
インカムゲイン(家賃収入)を狙うにはハードルが高いのです。
主力ターゲットは外国人
フィリピンの不動産運用では、購入するコンドミニアムの家賃は高額で海外駐在員や旅行者狙いになります。
当然として、投資用のコンドミニアムを購入する時には、マニラ首都圏やセブ島のような外国駐在員や旅行者が多いエリアを選ぶ必要があります。
そもそも法規制によってフィリピン人に建物を貸す事は出来ないので、すぐに借り手が見つからず空室期間が長期化する可能性も考慮します。
ですのでインカムゲインによる収益構造はかなり厳しく、キャピタルゲイン狙いになるのです。
売却・転売時はタイミングが大事
出口戦略として一番大事なのは、プレビルドで購入したコンドミニアムの売却のタイミングです。
実はフィリピンでは、コンドミニアムが完成し引渡しが終った後の登記にとても時間がかかります。
完成してから1年後にやっと登記されるケースもありますから、完成直後に売却する時には注意が必要です。
場合によりますが、数年間も権利書が手元に届かないこともあるので、物件を塩漬けにしないように賃貸運用も検討しておく必要があります。
またプレビルド完成前に転売する場合には、事実上「所有権がないままで売却」となるので、デベロッパーとの契約名義書き換えが必要です。
名義人変更手続きはデベロッパーによって対応がまちまちなので、購入前にちゃんと確認しておきましょう。
コンドミニアムを売却した時に発生するキャピタルゲイン税は基本的には売り主負担ですが、
契約書にその旨が記載されていない時には買主に法的なペナルティが課せられる事もあるので、契約書の作成時点で税金支払い条項の記載を確認しておきます。
④コンドミニアムの管理方法は2つの選択肢から選ぶ
コンドミニアムの賃貸管理では、デベロッパーの管理部門か専門の賃貸管理会社かのどちらかを選択します。
フィリピンでは日本のように物件を一覧で検索できないので、入居希望者はデベロッパーの管理部門に直接足を運ぶ事が多くあります。
この時に、管理会社がどのように客付けをしてくれるかは賃貸でも売却でも非常に重要なので、よく仲介の様子を見て下さい。
なお、専門の管理会社は様々な管理を一括して代行してくれるメリットがあります。
例えば、コンドミニアムを購入して賃貸運用する場合も、デベロッパーは内装工事まではやりませんが、管理会社は家具や家電を備え付けて貸し出してくれます。
さらに専門管理会社は、室内のメンテナンスや空室時の清掃なども任せる事が出来るので物件運用の手間を省く事が出来ます。
⑤フィリピン不動産に強いエージェントを見つける
不動産物件を探す為に購入希望者が何度もフィリピンに足を運んで物件選びをするのも難しいので、現地の不動産に詳しいエージェントを選ぶ必要があります。
後述しますが、フィリピンの不動産購入手続きは煩雑なので行政手続きに強いエージェントを選びます。
もう一つ、コンドミニアム購入ではデベロッパー選びがポイントです。
物件購入はもちろんですが、アフターケアがいい加減なデベロッパーを選ばないように慎重な選択をします。
⑥外国人投資家や駐在員に人気の物件エリアを選ぶ
フィリピンでの不動産運用物件選びでは、前述したように、外国人投資家や駐在員に人気のエリアを選ぶ必要があります。
主な人気エリアには、
- コンドミニアムが多く建設されているマニラのマカティ市
- 開発が著しいボニファシオ・グローバルシティ
- 観光地化が著しいセブ島
などがあります。
それ以外の地域でもコンドミニアム価格が上昇しそうなエリア、例えばダバオ市などは時々チェックしましょう。
注意点ですが、フィリピンは台風の直撃が多い土地なのにインフラ整備は遅れた部分が多い国です。
一見して人気エリアでも、台風で交通網が麻痺するようなエリアのコンドミニアムでは高値の転売や賃貸運用が出来ません。
- 本当に入居者にとって住みやすい環境にあるか?
- 転売まで賃貸運用が出来る可能性があるか?
を前提に物件を選びましょう。
⑦コンドミニアムの売買契約での注意点
売買契約時には英語が必須
フィリピンでは英語が公用語の一つであり、全人口の90%が英語を話す東南アジア随一の英語圏です。
そのため、不動産の売買契約書も英語表記です。
なお不動産運用に関しては中古物件を購入する際には特に注意が必要で、
契約後の一定期間内に税金を支払わなかった事を理由に罰金を求められる事があります。
契約書の内容に少しでも欠点があると、それを根拠に余計なペナルティを課せられる恐れもあるので、
英語に強い信頼できるエージェントに逐一、契約内容については精査してもらいましょう。
残金をローンで支払う場合は要注意
プレビルド物件を購入する場合には、最初に銀行口座を開設します。
支払いは小切手が一般的なので、銀行から自宅に送付してもらいます。
契約では、最初に購入申込書となる「予約契約書」をデベロッパーに提出し、購入金額の10~30%を予約申し込み金として支払います。
こうして申し込みをしてから半年以内に売買契約書が届くので、認証手続きと共に署名した契約書を送り返します。
その後の支払いは、建設段階に応じて「頭金→月々の分割払い→残金」のサイクルで行います。
物件完成時の残金をローンで支払う場合には、融資が確実に下りると見込める範囲で設定しないといけません。
もし融資の許可が下りないと、それまで払い込んだ資金のほとんどを失う事になります。
インハウスローンの利用はご用心
プレビルド物件の残金を支払う余力がなく、銀行融資も下りなかった場合には、デベロッパーが提供するインハウスローンを利用する方法もあります。
しかし、インハウスローンは金利が平均16~22%と銀行ローンの6,5%前後に比べてもかなりの高金利です。
どうしても利用せざるを得ない時には、返済期間が短いプランを利用して余分な金利を払わないように注意しましょう。
売買契約書の署名はすべて手書きによるサインですが、
仮にその日に現地に行けなかった場合には、帰国後に届く契約書類を持って公証役場まで行き公証人の目の前で署名します。
その後書類を外務省に持っていき承認印をもらい、フィリピン大使館で認証手続きをお願いする流れになります。
また、転売ばかりではなく不動産運用も考えている時には、先に「TINナンバー」と呼ばれる納税番号を取得しておく必要があります。
これは、非居住外国人がフィリピンで不動産運用を行う時、税務申告するために必要な番号です。
⑧物件の引き渡しの流れ
プレビルドのコンドミニアムは完成後に引き渡しをするのが普通です。
残金の支払いが終っている事を確認してから、デベロッパーから物件の鍵と引渡証明書と売買証書を受け取ります。
それから建物売買を仲介したエージェントに所有権移転手続きを依頼して終了です。
銀行ローンを利用している場合は、所有権移転完了後、運用物件に抵当権を設定しておきます。
⑨所有権移転における注意点
フィリピンの不動産運用における所有権移転ですが、プレビルドのコンドミニアムの場合は所有権の移転手続きはエージェントに任せておけば大丈夫です。
逆に注意が必要なのは、中古物件や完成後のコンドミニアム転売物件を購入した時です。
例えば中古物件の場合には、前所有者による固定資産税の税金滞納などをチェックし、未納があったら支払いを先に済ませてもらいます。
これが済まないとペナルティとして買主に罰金が課せられる時もあります。
中古物件の税金滞納確認が済んだ後、売主から買主にコンドミニアム所有権移転を許可するCAR(Certificate Authorizing Registration)と呼ばれる書類が税務署を通して送られ、それからようやく所有権移転の手続きに入ります。
また、登記所に提出する書類にはコンドミニアム管理組合から所有権移転承諾書というものが必要ですが、
所有権移転承諾書の発行には売主に維持管理費や光熱費の滞納がない事の確認が必要です。
承諾書の発行には一週間ほどもかかる場合がありますので、事前に手配しておいた方がいいでしょう。
登記所に提出する書類は多く、事前に何を提出するか把握して準備しないと何度も登記所に足を運ばないといけなくなります。
まとめ
今日は、フィリピン不動産運用を始める前に知っておきたいノウハウを解説してきました。
海外不動産投資にはリスクが付き物です。
安易な理解で始めるのではなく、しっかり下調べしてから始めることをおすすめします。