ダメ絶対!インサイダー取引は自滅への第一歩

株式投資を行う者にとって絶対にしてはいけない取引方法がいくつかあります。

例えば自分の名前を偽って取引を行う仮名取引や不自然な売買を成立させることで株価を上下させるような相場操縦行為等、いわゆる公正な価格形成を阻害するような不公正取引といったものがそれにあたります。

さて、今回はその中でも刑事罰の対象ともなりうるインサイダー取引(「内部者取引」ともいいます)について解説していきたいと思います。

インサイダー取引はどのようなものか?

はじめに「インサイダー取引」とはどのようなものかについて解説したいと思います。

「インサイダー取引」とは、

「上場会社または親会社・子会社の役職員や大株主などの会社関係者、また会社関係者から重要事実の伝達を受ける者は、株価に影響を与えるような重要事実を知り、その重要事実が公表される前に特定有価証券等の売買を行う行為」

のことを言います。

つまり他の投資家と比較して特定の株の価格が上下するような情報が入ってくる人はその特定の株式を売買してはいけませんということです。

重要事実を知っている投資家だけが利益を享受し、その他の知らない投資家が損をするような歪な市場を形成しないようにするために日本国内では昭和23年に制定された金融商品取引法によって制定されましたが、平成21年の株券電子化制度が導入されてからようやく個人の株式売買の動きを監視できるようになった経緯があります。

では具体的に実際どのようなケースがインサイダー取引と見做されてしまうのかこれから見ていきましょう。

自分が上場企業A社の役所員であるケース

ご自身が上場企業A社に所属しており、業務を行う過程で決算情報や他社との提携情報を知ってしまうことは往々にしてあることだと思いますが、その情報が公表される前に自社(A社)の株式を売買すれば当然インサイダー取引に該当します。

また、A社には親会社B社と子会社Cがあって、そのどちらの企業も上場していたとするとA社の業績等で他のB社やC社の株価に影響を与えることもありますし、その逆もまた然りなので売買を行うときは注意しましょう。

その他見落としがちなのが関係会社や取引先に上場している先があり、重要事実を知ってしまうケースです。

特に金融業界の担当者は普段の営業等で企業の重要事実を知ってしまうことが多々ありますが、むやみに周囲の人に話すことでそれがインサイダー取引につながることもありえるので気を付けてください。

自分の知人や周囲の人が重要事実を知っているケース

ご自身の業務内での情報は基本的にインサイダー取引に係る重要事実だという意識を持ちやすいですが、このケースは監視機構からの特定も難しいために「ちょっとくらいならバレないだろう」という意識から売買を行ってしまうことがあるようです。

ただし、どちらかというとこちらのケースの方が周囲の監視機能が働いていない分、見つかったときには既に最後の訴訟のステージである可能性が高まるため、「ちょっとくらい」という意識は絶対に持たないようにしましょう。

なお、少し話は脱線しますが従業員持株制度で自社株を定期的に購入されている方は重要事実を知っていても知っていなくてもその購入自体についてはインサイダー取引には該当しません。(ただし、重要事実を知ってから持株会に入会もしくは拠出額の増額をした場合を除く)

しかし、持株会から自分が購入した分を売却する場合はインサイダー取引に該当するため、事前に社内で株式売却の許可を得てから売却をするようにしましょう。

更には既に会社を辞められている方にとっても辞めてから1年以内はインサイダー取引の対象となることから注意してください。

インサイダー取引をするとどんな罰則があるのか?

次に実際にインサイダー取引を行うことでどのような罰則があるかを見ていきましょう。

インサイダー取引を行ったのが個人である場合は金融商品取引法第197条の2より5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰則(又は懲役と罰則の両方)がかけられ、同法第198条の2より当該インサイダー取引によって得た利益は没収となります。(没収すべき財産がなくなっている場合は追徴となるケースもあります。)

一方インサイダー取引を法人ぐるみで行った場合はインサイダー取引を実際に行った個人だけでなく、法人にも5億円以下の罰金がかけられます。

このため、インサイダー取引が発覚した場合は多くのペナルティが課されることから株式投資を行う際には少しでも疑われるような銘柄の売買を行うことは避けるようにしましょう。

インサイダーはどうやって見抜かれるの?

ここまで読んでいただいた方で敢えてインサイダー取引を行うことはしないと思いますが改めてこの項ではインサイダー取引がなぜ見つかるかということについて触れていきたいと思います。

日本国内では金融庁に属する「証券取引等監視委員会」がインサイダー取引の有無を調査しています。

大まかな調査方法としては重要事実の公表があった銘柄についての売買取引を洗い出し、売買取引者の中でインサイダー取引になりそうな属性の投資家をピックアップして調査するような流れになっております。

また、日本取引所グループの「日本取引所自主規制法人」や各証券会社も突然の売買高の増加等については毎日監視しているため、何か不審な取引をした投資家はマークされるようになり、

インサイダー取引についての可能性が高い、もしくは確証があった段階で証券取引等監視委員会に報告されるため、投資家が考える以上に監視の目は多くあります。

株券電子化制度が導入された以降は基本的に株式売買の取引歴は電子上に残されており、不審な口座の動きは常に見張られていることからインサイダー取引を行えば見抜かれてしまうため、絶対に行わないようにしましょう。

情報商材でインサイダー情報を謳っている情報は信じていいの?

よくインターネットで株式投資の情報を探していると

  • 「必ず上がる株を教えます!」
  • 「トレード必勝法」

などを謳う怪しい情報商材の広告を見ると思います。

基本的にそのような情報商材は作成者のトレード方法やデマが多いですが、本当にごくまれにインサイダー情報を知っている方が配信する情報商材もあるようで、

これらの情報に便乗して「〇〇万円稼ぎました!」といった話も見られると思いますが、結論から言ってそのような情報を見るのは時間の無駄なのでやめましょう。

そもそも相対の取引もしくは複数人の取引であれば、価格の上がり下がりを予想することは容易ですが上場株式のように何万人もの投資家がいるなかで上がり下がりを完璧に予想することは不可能です。

そしてもし完璧に予想している人間がいるならば、その人はインサイダー情報に基づいて情報を発信していることになります。

その重要事実を重要事実だと判断したうえで売買を行えば当然あなたもインサイダー取引をしたことになります。

このため、情報商材については有料なもの・無料なもの等様々な形式で配布されていますがそれを利用することであなたもインサイダー取引に与していると疑われないためにもそのような情報商材を見ることは禁止です。

最後に

今回は株式投資を行うにあたって絶対に行ってはいけない「インサイダー取引」についてでしたが、その他にも

  • 相場操縦行為
  • 仮名取引
  • 借名取引

などの不公正取引があります。→たった5分で分かる 株式投資初心者が知っておくべき株式の基本

これらは現状日本国内では刑事罰の対象とはなっておりませんが、各証券会社で禁止している行為であるため、不公正取引を行えば株式投資自体ができなくなるでしょう。

株式投資は長期的な目線で資産を増やすための投資対象である一方、不公正取引情報等があれば確かに一夜にして億万長者になることだってあります。

ただし、そのような行為で自分の人生を狂わすことは本末転倒であるため、フェアプレー精神によるご自身の判断に基づいた取引で成功されることを願っております。