2016年9月に「働き方改革」の実施が開始され、サラリーマンの「副業」「兼業」が見直されるようになりました。
- ではその働き方改革のガイドラインとはどんな内容なのでしょうか?
- どんなメリットが生まれるようになったのでしょうか?
- すでに「副業」「兼業」を解禁した会社はあるのでしょうか?
今日はそんな内容をお話ししたいと思います。
会社員の「副業・兼業」を国が促進
今回厚労省が発表したのは「副業・兼業」に対する政府の見解と導入にあたっての留意事項などをまとめたガイドラインと、
副業・兼業を認める一文を加えた就業規則のモデルです。
政府は2016年9月より「働き方改革実現会議」の実施を開始しました。
そこでは、日本人の労働生産性を向上させるために、
- 「同一労働」
- 「同一賃金」
- 「ワークライフバランス」
- 「柔軟な働き方」
などの検討が行われてきました。
その中でも「副業・兼業」については、テレワークも加えた政府が目指す「柔軟な働き方の実現」として阿部首相自らが重点項目の一つとして挙げています。
日本は副業・開業意識で世界の中でも後進国
「副業・兼業」は日本人の潜在的な創業意識を高めるものとして注目されてきました。
中小企業庁の調べでは2006年~2009年の間の新規開業によって全雇用の37.6%が賄われ、
起業と雇用の創出には重大な相関関係があると見られています。
しかしOECD(*Organisation for Economic Co-operation and Development:経済協力開発機構)が調査している「起業家精神に関する調査」によると、
今後起業や開業をしたいと考えている人の割合は世界と比較すると日本は3.8%とOECD諸国の中でも最下位です。
要因として考えられるのは、日本は終身雇用文化が根強いことでしょう。
現在所属している起業から離れるというリスクが大きく、起業に対するプラスのイメージを持ちにくいのが一因と考えられます。
しかしそんな中でも政府一丸となって「副業・兼業」を推進する事で、
個人個人が会社ではない外の場所で新しい事業のアイディアを見つけ、起業・開業を志す人が増えるのでは…と期待されています。
*OECD(Organisation for Economic Co-operation and Development:経済協力開発機構)
本部はフランスのパリに置かれている。第二次世界大戦後、米国のマーシャル国務長官は経済的混乱状態にあった欧州各国を救済すべき「マーシャルプラン」を発表した。そして、これを契機とし1948年4月には欧州16カ国で前身であるOEEC(欧州経済協力機構)が発足した。その後、欧州経済の復興に伴ってこのOECDが発足した。日本は1964年に加盟国となる。
日本企業の多くは就業規則で副業・兼業を禁止
今まで日本企業の多くは、就業規則として「副業・兼業」を全面的に禁止していました。
2017年2月の「副業・兼業に対する起業の意識調査」によると、副業・兼業を禁止している企業の割合は77.2%にも上りました。
「職務専念義務」という言葉をご存知でしょうか?
これは労働者に対する義務で、労働者は会社で自分が担務している仕事に専念しなければならないという内容です。
この内容は多くの就業規則にこの文言が明記されており、それに加え、
- 「就業時間中に株取引やFXなどをしてはいけない」
- 「副業をしてはいけない」
といった事が併記されています。
要は就業規則とはその会社でやっていくためのルールといったものであり、規則を守らなければその会社では働けないのです。
厚労省では企業が就業規則を作成するにあたりモデルのような規則を公開しており、
新しく発表されたモデルには従来の内容に新しく「副業・兼業」を容認する一文を加えました。
副業・兼業に対する政府の見解
それでは、改めて今回のガイドラインや就業規則のモデルについてご紹介します。
ポイントは「労働者の自由として副業・兼業を必要以上に制限しない」とされた点です。
企業は副業・兼業について「認めても構わない」としたのではなく、積極的に導入すべきだとされたのです。
◆勤務時間外をどう利用するかは労働者の自由
厚労省が示したガイドラインでは「労働者が就業時間以外の時間をどう利用するか、その労働者の自由であり副業・兼業の制限は原則出来ない」とされています。
企業が副業・兼業を制限する事ができるのは、就業規則のモデルによると以下の4つに当てはまるときです。
- 労働提供上の支障がある場合
- 企業秘密が漏洩する場合
- 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破破壊する行為がある場合
- 競業により、企業の利益を害する場合
◆労働者本人が副業・兼業で得られるメリット
副業・兼業が解禁されると労働者個人にはどのようなメリットがあるのでしょうか?いくつかご紹介します。
- 所得が増える
- 様々な領域の新しい知識やスキルを得る事が出来る
- 多くの経験をする事が出来る
- 新しいキャリアを構築する事ができる
- キャリアアップに繋がる
- 自己実現
- 就業しながら行えるため、金銭面でのリスクが最小限に、起業・開業に向けて動く事が出来る
反面、デメリットとしては健康に害する事があるという問題があります。
副業のために健康を害して本業に支障が出ては元も子もないです。
そういうことが多発すると副業に対するマイナスイメージがさらに大きくなってしまいます。
今回の働き方改革でマイナスな働きが起きないように、副業・兼業を行う際は健康管理に充分気をつけるようにしましょう。
◆副業・兼業で企業が得られるメリット
副業・兼業が解禁されると企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
労働者だけでなく企業にもメリットがあるという点でも、副業・兼業は今後全面的に認められてくるでしょう。
メリットをいくつかご紹介します。
- 社員同士が副業で得た知識やアイディアを共有でき、新規事業の開拓に繋がる
- 自己実現欲が満たされて社員のストレスを軽減し、離職を防げる
- 優秀な人材を獲得できる
- 社員が社外でスキルアップ出来る
など。
反面、企業側にとっては副業での環境が良かった場合社員が離職してしまうのではないか…という不安の声も上がっていますが、
今後、より副業・兼業に対する動きが活発になってくるとまた新たな働き方の概念が生まれ、誰もが両立出来る社会になってくるのではないでしょうか。
そして、社内で起業家精神を育む事は企業組織にとってもプラスになると考えられています。
副業・兼業の事例
さて、そんな副業・兼業が実際に現代社会においてどのように導入され、反響を呼んでいるのかをいくつかの事例と共にご紹介します。
2016年2月「ロート製薬」の副業容認に注目が集まった
製薬会社を代表するロート製薬は2016年2月に「副業容認」をしました。
これは、業界内のみならず日本の多くの企業から注目と影響を集めました。
社内制度の一つとして新しく発表した「社外チャレンジワーク制度」というものです。
その当時他に、多くの社内制度が発表されたため新しく発表されたあくまで一つ…とされていましたが、
それに反して「副業・兼業をロート製薬が解禁した」と大きく取り上げられました。
ロート製薬では社内の部署兼務も容認しており、人事改革プロジェクトとしていち早く実現しました。
「ソフトバンク」「DeNA」「コニカミノルタ」が副業解禁
◆ソフトバンク
2017年10月にソフトバンクが副業を解禁しました。
11月から導入されたのですが、130人以上の副業申告があったものの会社からは全ての許可が降りた訳ではないようです。
朝日新聞の取材によると、パン屋やコンビニ店員など飲食店などのアルバイトは却下され、
- 俳優
- 大学講師
- NPO役員
など、クリエイティブな内容のものや自己開発など目標が定まっているものだけが許可されたと言います。
◆DeNA
2017年10月にDeNAも副業を解禁しました。
DeNAが以前から推進している人事プロジェクト「フルスイング」の一環で、
副業だけでなく業務の30%まで他部署の業務と兼務できる制度と共に運用されています。
◆コニカミノルタ
コニカミノルタは2017年12月から副業を解禁しました。
イノベーションを創出する人材育成を目的に、主に
- ITプログラマー
- コンサルタント
- 会社経営
としての副業を通じて、社外でスキルアップできる環境を推進しているのです。
「カゴメ」副業解禁、決算会見で社長が助言
2018年2月1日に行われたカゴメの決算会見の一幕で社長の寺田直行氏は「2019年には副業も解禁する」とコメントしました。
カゴメでは以前から積極的に働き方改革に取り組んでいて、2020年までに社員の総労働時間を1800時間へ圧縮すると目標を立てています。
更に、有給取得率も7割から8割へ高めてより働きやすい環境を作るように動いています。
2018年は副業解禁元年!
2018年に入ると、それまでよりも副業を解禁する企業が増えてきました。
これは、徐々に副業が全国的に認められてきているという証拠でしょう。
◆エイチ・アイ・エス
大手旅行企業のエイチ・アイ・エスは2018年5月から副業を解禁しました。
現在副業としての個人事業は認めているものの、長時間労働抑制の点から二重労働は一時見送りとなっているようです。
◆ユニ・チャーム
衛生用品メーカーのユニ・チャームは2018年4月から入社4年目以降の正社員を対象に副業を解禁しました。
社外で新しいスキルや経験をして個人のレベルアップを期待しているようです。
そのため、個人が明確な目的を持ち、なおかつレベルアップ出来る副業のみ容認しています。
さらに、健康管理を考えて24時以降の勤務を禁止しています。
◆新生銀行
新生銀行は2018年4月に大手金融企業として始めて副業・兼業を解禁しました。
これまで新生銀行は、親族の会社を引き継ぎ、報酬が発生しないものなど特別な場合以外副業・兼業を認めていませんでしたが、新たに就業規則を改めました。
◆アサヒグループホールディングス
大手ビールメーカであるアサヒグループホールディングスは、2018年4月から満60歳の定年退職後に再雇用されたシニアスタッフを対象に副業を解禁しています。
まとめ
このように政府が発表した働き方革命が大きく影響され、企業での副業・兼業が認められ始めました。
まだ偏見的な意見も多く存在しますが、プラスに捉えると社会や企業全体が良くなるという事を考え、良い方向に副業・兼業が起用される事を願います。
そして個人個人のスキルアップや学びの場がより増えることにより本業への意欲向上へとつながり、結果企業全体のレベルが上がるのでしょう。
今後どのような企業で副業・兼業解禁されていくのか、目が離せない話題です。