投資と聞くとプロがやるもの、素人が手を出してはいけないものというイメージがあります。
しかし、銀行預金をしても雀の涙程度の金利しか期待できず、
景気がよくなる傾向もないとなれば、プロが運営して安全な投資信託という結論になる人もいるかと思います。
ですが、投資信託は本当に安全で、ただ任せておけば儲けを出せる魔法のシステムなのでしょうか?
そこで、この記事では、投資信託の知られざるリスクとメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。
投資信託とファンドの違いは?
投資信託とは金融商品の一部で、大勢で出し合ったお金をプロに一任で運用してもらい利益を出す仕組みです。
こうした仕組みを「ファンド」と言いますが、ファンドは行政管理下にない金融商品も含むので投資信託と違う点もあります。
投資信託は行政の監督を受けた投資信託委託業者により厳正な管理の下で運営され、扱う商品は
- 株
- 債券
- 土地
などがですが、行政が管理しているからと言って必ずも儲かるとは限らず、損をしても補償もありません。
その点ではファンドよりも安全性は高いものの、ノーリスクではないと言えます。
投資信託に関わるのは?
投資信託には、主に下記の4者が関係してきます。
- 投資家(受益者)
- 証券会社・銀行(販売会社)
- 運用会社(委託)
- 信託銀行(受託者)
投資家は販売会社を通じて運用会社に資金の運用を委託します。
しかし、預けたお金を運用会社に預けて持ち逃げされては困るので、資金は実際には信託会社に預けられます。
そして、信託会社は運用会社の指示で信託財産を管理するのです。
このように、運用会社と資産の管理を別々にする事で投資信託は資産の安全性を担保しているのです。
投資信託のメリットとデメリット
投資信託とは、投資に興味があってもあまりお金がない人や、運用に自信がない人にとって始めやすい商品です。
しかし、お金を運用して増やす行為なので、当然メリットとデメリットがあります。
➤投資信託のメリット
投資信託のメリットには以下の3つです。
- 小額投資で100円からでも投資が可能。
- 分散投資でリスクが減らせる
- 個人では投資しにくい国や地域に資産投資できる
まとめてしまうと、投資信託のメリットは小額から始められ、分散投資で大損のリスクを回避でき、
個人では到底探せないような国や地域に投資の形で社会貢献できるというメリットがあります。
➤投資信託のデメリット
投資信託の主なデメリットは以下の2つです。
- コストが利益を圧縮する
- 元本割れのリスクがある
投資信託のデメリットについてまとめると、人に投資を任せるわけなので種々の名目でコストが掛かります。
そして、当たり前ですが、投資信託は元本が保証されていないので、損失が出ると投資家が出資金に応じて負担しないといけません。
投資信託にはコストがかかる
投資信託に限る話ではありませんが、自分の仕事を第三者に頼むとコストが発生します。
投資信託には、運用会社、信託会社など複数の第三者が介入しているので、その分のコストが発生するのです。
こちらの投資信託にかかるコストは以下の3種類です。
➤投資信託コスト種類
- 販売手数料
➤会社や銘柄で1.05~4%程度。ノーロード投資信託という販売手数料無料のモノもある。 - 信託報酬
➤投資信託を運用するコストで年0.5~3%、金融商品を保有している間は毎年掛かる。 - 信託財産留保額
➤運用していた金融商品を解約し換金する時の手数料で元本の0.5~1%。無料のモノもある。
➤それ以外にもかかる投資信託の費用
主な手数料は3種類ですが、その他に実質コストがかかる事もありますので、運用報告書をチェックして把握しましょう。
一般的には大手の金融機関では上記手数料がフルにかかるので、相応の利益が出ない間に金融商品を売却すると、元本割れを起こして返って損をするリスクもあります。
さまざまな投資信託の形とメリット・デメリット
投資信託には、様々な種類があります。
それらは、
- インデックス投資信託
- 上場投資信託
- 不動産投資信託
- ノーロード投資信託
などです。
ここでは、それぞれの投資信託のリスクやメリットとデメリットを解説します。
インデックス投資信託
インデックス投資信託とは、日経平均株価やニューヨークダウなどの株式指標(インデックス)と同じような値動きをするように作成された投資信託です。
➤インデックス投資信託メリット
インデックス投資信託のメリットは、例えばアメリカの株式市場の投資が好調でアメリカの株に投資したいとすると、
ニューヨークダウ等を連動対象とした投資信託を持てば、アメリカ株の成長に乗って資産価値も上昇します。
これなら、わざわざ外国株の口座を開設して、有望銘柄を探し投資するよりも時間と手間をショートカットできます。
そのため、運用会社も投資先を考える必要がなく、コストが低く抑えられるメリットもあります。
➤インデックス投資信託デメリット
インデックス投資信託は、「市場の平均」である株価指数と連動する商品なので、市場平均以上に儲けることはできません。
大きく儲けたいという人には向いていないのがインデックス投資信託のデメリットです。
インデックス投資信託だけでは、なかなかお金持ちにはなれないでしょう。
また、投資信託にはインデックス型以外にアクティブ型もあります。
アクティブ型はベンチマークを常に上回るように情報を集めて積極的な運用をするタイプです。
インデックス型より利益が上がる確率が高いですが、その分手数料が掛かります。
上場投信
上場投資信託とはETF投信とも言い、証券会社を通じて投資家同士が直接取引する方法です。
➤上場投資信託メリット
通常の投資信託と違い、運用会社が仲介しないので手数料が安く済むメリットがあります。
また、ETFだと証券会社は仲介しているだけなので、連動する銘柄を組んでしまえば、コストはかかりません。
インデックス投信と同じように市場と連動した値動きをしますが、価格はリアルタイムで変動、即時売却も出来ます。
➤上場投資信託デメリット
デメリットとしては、購入単位が金額ではなく株と同じ口数単位なので、最低投資額が投資信託より大きくなります。
それから配当金を自動で再投資できず、さらに手数料がかかったりします。
不動産上場投資信託
不動産上場投資信託とは、J-REITとも言い、上場投資信託の不動産バージョンです。
不動産物件を購入して、その賃貸収入や売買益を投資家に分配するという金融商品になります。
対象不動産は、
- オフィス
- マンション
- 商業地
- ホテル
など数が多いですが、法律上は投資信託に入ります。
➤不動産上場投資信託メリット
不動産投資信託のメリットは、一定条件を満たす事で実質的に法人税がかかりません。
内部留保もないので、一般の株式に投資するより上がった収益がほぼそのまま分配金になります。
つまり、投資が成功すれば分配金が多くなりやすい投資信託なのです。
➤不動産上場投資信託デメリット
不動産投資信託のデメリットは、実物資産なのに所有する事が出来ない事です。
また投資対象が不動産法人なので、倒産による投資の失敗の可能性が常にあります。
不動産は流動性が低いという性質があるため、随時投資家の求めに応じて購入や売却できません。
そのため、実質は不動産法人を投資対象にして、証券取引場に上場して流動性を確保しています。
なので、不動産を扱いながら価格決定や取引の仕方は上場株式と同じです。
ノーロード投資信託
ノーロード投資信託とは、購入時に販売手数料がかからない投資信託です。
購入時の費用を抑えて投資信託の敷居を低くして投資家を集めようと言うアイデアですが、
実際には、販売手数料のマイナス分を信託報酬で補っている場合があるので注意が必要です。
1年目だけはノーロード投資信託が有利で、2年、3年目になると高い信託報酬で、一般の投資信託よりコストが割高になる事もあります。
税制優遇のNISAの落とし穴
NISAとは、2014年から開始された少額投資非課税制度の事で、
従来上場株式や投資信託などの売買益に課されていた所得税15%と住民税5%をプラスした20.315%の税金が、
NISA口座を利用すると最大120万円までの投資に対する配当金が最大5年間非課税になる制度です。
例えば、NISA口座で株を120万円分購入しそれが5年後に倍になり240万円で売れたとします。
従来なら売却益の120万円に20.315%の課税が掛かり、24万円が税金として持っていかれますが、NISAだと丸々非課税なのです。
それだけ聞くとNISAの投資信託にはリスクがなさそうですが、実際にはメリットとデメリットが存在します。
なんで?損益通算が出来ないNISA
NISAのデメリットは、損益通算や3年間の損失の繰越しが出来ないという事です。
まず、損益通算とは、株や投資信託などの金融商品の間で利益と損失の合算が認められる制度です。
つまり、投資で損失が出た時には、利益から損失分を差し引き、残った利益にだけ課税されます。
ところがNISA口座で取引すると、損益通算が出来ないのです。
例えば、あなたがAの投資信託で100万円の利益を出し、逆にBの投資信託で50万円の損失を出したとします。
これを損益通算すると100万円-50万円で、利益は50万円になり税金は10万円になります。
しかしNISAでは、損益通算が出来ないので、100万の利益にそのまま課税され20万円の税金がかかるのです。
つまり、120万円の非課税枠を造る代わりに損益通算が認められず、
儲かればいいですが、損をすると普通の投資信託より不利なのがNISAなのです。
どうしてNISAが変な制度になっているのかと言うと、NISAは元々、国が個人に投資を促す為に導入した制度であり、
「お金は使って欲しいけど税収は減らしたくない」
という国の本音が隠れているからです。
またNISAは投資総額の上限も600万円と決まっていて、投資信託のように上限がないわけではありません。
上手く投資すれば課税されず小金が稼げる制度であり、お金持ちになれるような制度ではないのです。
毎月分配型投資信託の落とし穴
最近人気を集めているのが、毎月分配金を受け取る事が出来る触れ込みの毎月分配型投資信託です。
毎月分配型投資信託は、毎月の決算をして収益の一部を分配する形で、毎月分配金が受け取れるので人気があります。
しかし、この毎月分配型はデメリットも多く、下手をするとお金持ちどころか資産が目減りしてしまいます。
毎月分配型投資信託のデメリット5
毎月分配型投資信託には、以下のような5つのデメリットがあります。
- 分配される度に課税され利益ロスが大きくなる
- 利益が減らされて、その分複利効果が薄くなってしまう
- 分配金を出す度に事務手数料が差引きされコストがかかる
- 常に分配金分をストックする必要があり資産の運用効率が低下する
- 収益が出なくても投資家を逃がさない為、分配金を出すタコ足分配問題があり元本割れが発生する
このように、毎月分配型投資信託には、デメリットも多いので必ずしも有利とは言えません。
特にタコ足分配金は、自分で自分の元本を切り崩しそれに課税されるという大損ですから、そんな変な投信に引っ掛からないように慎重に選びましょう。
世界に比べても変な日本の投資環境
投資信託で金持ちになれない決定的な理由は、儲けが出ても20%の課税が課される点です。
ところが、世界の金融先進国では基本的に投資は税金が掛からないのです。
日本ではNISAがオトクなどと呑気な事を言ってますが、先進国では元々投資に課税をしません。
海外投資しても日本国籍である限り、課税は免れない
では、オフショアを使い海外投資すればいいの?と思ってしまいますが、それもダメです。
租税条約により、現地で非居住住人として活動する外国人は租税が免除される事は往々にしてあるのですが、
日本の非居住者に関しては法人、個人問わず全世界所得課税として所得税と住民税が課税されます。
結局、日本国民である限りは投資の課税は免れないので、別の資産形成も考えないといけません。
やはり、投資信託だけではお金持ちにはなれないのです。
まとめ
投資信託だけでお金持ちになるのは難しいのですが、以下のポイントを押さえると、無駄なコストを防ぐ事が出来ます。
- プロ任せにせずに、自分の投資金がどうなっているか把握する
- コストに敏感になり、少しでも安い投資信託を選ぶ
- 分配金をあてにせず、生活資金は別に預金を用意しておく
このポイントを押さえるだけでも、お金持ちにはなれないにしてもリスクを減らす事が出来ます。