近年、サラリーマンや主婦の方も投資や副業を始める方が多くなっています。
様々な投資手段がありますが、中でも外国為替証拠金取引、通称FXが非常に人気です。
理由は、少額から取引できる点、小さな投資額でも大きくリターンを狙える点、パソコンやスマホで24時間どこでも取引できる点など人気の理由は様々です。
そんなFXですが、取引ルールの中に強制ロスカットという制度があります。
これを知らずに取引を開始してしまうと、知らない間に強制ロスカットにかかってしまい資金を失ってしまうという危険もありますので、予め把握しておくことが重要です。
これから、強制ロスカットについて解説していきたいと思います。
強制ロスカットとは?
ロスカットとは、日本語で損切りという意味です。
すなわち強制ロスカットとは、自分の意思とは関係なく、自動的に自分のポジションが損切りされて決済されてしまう仕組みのことです。
通常、FXでは買ったポジションを売る決済、あるいは売ったポジションを買う決済は自分のタイミングや、あらかじめ自分の決定していた価格で決定されるのですが、強制ロスカットの仕組みは、ある一定割合以上の含み損を抱えるところまで自分のポジションが来ると、投資家の意思とは関係なく自動的に決済されてしまうのです。
このシステムは何のためにあるかというと、投資家の損失を投入している証拠金以内に収めるため、あるいはFX業者が回収不能な損失を出さないためにあります。
もし、この強制ロスカットという機能が働かなければ、自分が買ったポジションが知らない間に大暴落していて多額の含み損を抱えた場合、損切りせずに放置しておけば、最終的に自分の資金以上に多額な借金を抱える可能性が出てきます。
また、FX口座を開設している業者からすれば、投資家から回収不能なほどの含み損を抱えさせられるリスクもあります。
このように、投資家、FX業者双方のどちらにとっても好ましくない事態を避けるために、強制ロスカットシステムが存在します。
算出方法
では、具体的にどの基準に入れば強制ロスカットとなるかを解説していきます。
そのためには、必要証拠金、有効証拠金、証拠金維持率という3つの数字に関して理解する必要があります。
まず、必要証拠金とは、その通貨を取引する際に必要な最低限入れておくべき資金のことです。
必要証拠金の計算式は
必要証拠金=為替レート×lot数÷レバレッジ比率
になります。
為替レートは、その時点での貴方がトレードする時の通貨ペアのレートです。ドル円であれば1ドル100円、といった価格レートのことです。
Lot数とは、通貨数量のことです。FXの取引単位は、通貨単位といって基本取引単位は1万通貨が原則で、1万通貨とは米ドルで1万ドルになります。
レバレッジとは、日本語で「てこ」という意味で、実際に持つ力より何倍もの力を発揮できることから、投資の世界では少ない金額で大きな取引ができるという意味になります。例えば、国内FX取引口座では最大でレバレッジ25倍という規制があります。
これだけではわかりにくいので、具体的に解説します。
例えば、米ドル1万通貨を買う場合、その時点での米ドル日本円通貨レートが1ドル100円だった場合、日本円で100万円の資金が必要になります。
しかし、FXではレバレッジという仕組みを使うことで、より少ない資金で1万ドルを購入することができます。
国内FX取引口座では最大でレバレッジ25倍ですから、必要資金の1/25を用意できればその通貨を購入できる、ということになります。
例えば、米ドル日本円通貨レートが1ドル100円の時に1万通貨、米ドルで1万ドルを買うには、本来100万円必要なところ、4万円あれば最大レバレッジ25倍を利用することで買うことができます。
この時の4万円を必要証拠金、と言います。
先ほどの計算式に当てはめると、
必要証拠金(4万円)=為替レート(1ドル100円)×lot数(1万通貨)÷レバレッジ比率(25)
となります。
この計算式から分かる通り、取引通貨、取引する際の価格レートにより必要証拠金は多少変動します。
また、レバレッジが数百倍から数千倍までかけられる海外FX口座であれば、より少ない必要証拠金で取引できることになります。
次に有効証拠金ですが、これは簡単で自分の口座の資金の中で、いま現時点で実際にあるお金の総量と考えれば良いでしょう。
有効証拠金の計算式は?
有効証拠金=証拠金–含み損益、あるいは有効証拠金=証拠金+含み利益
になります。
例えば、自分が初めに100万円を証拠金として投入し、FX取引の中で自分の持っているポジションが10万円の含み損を抱えている状態とします。
実際に決済しなければ10万円のマイナスは確定しませんが、その時点では証拠金は10万円減額していることになり有効証拠金は90万円ということです。
逆に、自分の持っているポジションが10万円の含み益を抱えている状態であれば、有効証拠金は110万円になります。
最後に、証拠金維持率ですが計算式は以下の通りで、上の二つの数字を当てはめるだけで算出されます。
証拠金維持率=有効証拠金÷必要証拠金×100%
そして強制ロスカットは、この証拠金維持率をベースに決められていることが多いです。
基準は様々ですが、国内では証拠金維持率が40%から100%を割るとロスカットがかかるようになっている口座が多いです。
海外口座での証拠金維持率は平均で40%、口座によっては証拠金維持率0%まで強制ロスカットされないところもあります。
強制ロスカットの仕組み
では、どのように強制ロスカットが発動するかを具体的な取引の内容で解説します。
ドル円通貨レートが1ドル100円の時に、10万円の証拠金を投入し、レバレッジ10倍で1万通貨を買ったとします。
この時の必要証拠金は最大レバレッジが25倍とすると4万円です。
この口座のロスカットの証拠金維持率が100%だと仮定します。
このトレードが仮にドル円通貨レートが1ドル94円に暴落してしまえば、6万円の含み損失が出ていますので、有効証拠金は証拠金10万円–含み損6万円=4万円になっており、先ほどの計算式に照らし合わせると、
有効証拠金4万円÷必要証拠金4万円×100%=証拠金維持率100%となり、ロスカット基準に入るので、強制決済となるのです。
強制ロスカットしないための取引の重要性
このように、FXではある一定以上の含み損が出てしまえば強制ロスカットになる仕組みができているのですが、これは投資家保護の観点からできているシステムです。
そもそも、強制ロスカットになるほどのレバレッジでポジションを持つのは非常に危険です。
上の説明例では、10万円の証拠金でドル円通貨レートが100円の時に、レバレッジ10倍で米ドル1万通貨を買い、ドル円通貨レートが1ドル94円に下落した、というパターンで解説しましたが、本来、ドル円が短期間で6円も下落することは通常ありません。
すなわち、強制ロスカットにかかるということは、10倍どころか相当にハイレバレッジを効かせてトレードしていることになり、総資金に対してのトレード量が多過ぎるのです。
このようなポジションサイズでトレードを繰り返してはやがて取り返しのつかない損失額を出してしまうかもしれません。
自分の資金量の範囲で行うこと、またFXトレードを行う以上、ある一定の確率で損失が出る可能性を踏まえて取引を行っていくことが重要です。