株主優待とは企業が一定以上の株式を権利確定日に保有していた株主に対して自社の製品や割引券を提供する制度です。
企業の決算期が多い3・6・9・12月前には株主優待の話題で株式投資の雑誌が盛り上がりますが、株主優待を目当てに株式投資を行っている方も少なくないのではないでしょうか。
今回は株主優待の実践編ということで実際に株主優待の銘柄を選定するための着眼点について解説していきたいと思います。
実はこの制度は諸外国と比較して日本の普及率が高く、投資家の中には配当利回りと株主優待の両方を考慮して銘柄を選定している人もいるようです。
それではまずどのような株主優待があるか数社の過去の株主優待を基に見ていきましょう。
おすすめの株主優待とは?費用に対して優待が良いものなど
前提としてですが株式はほぼ毎日価格が変動します。
このため、雑誌やインターネット等で紹介されているおすすめ銘柄は「株主優待の中身」がお得に感じるものを薦めているだけであって実際の利回りはその時の取得原価を基に計算されるものを忘れないでください。
この前提があることから通常雑誌等で掲載されている銘柄にはある程度買いが集まり、株価が上昇する傾向があります。
そして株主優待の権利を得た瞬間に株式を売却する投資家もいるため、なかなか売却益と株主優待の両方で利益を得ることは難しいでしょう。
このため、この記事ではおすすめの株主優待=『費用に対して優待が良いもの』と定義して、割引券などの1回利用したら金銭的メリットが消えてしまうもの以外をご紹介したいと思います。
これは冒頭でもお伝えした通り「何株以上保有していれば○千円の割引券」がもらえるとなると、その株式を取得した原価によって利回りが大きくなってしまい、タイミングによってはあまり投資効果が出ない銘柄もあるためです。
そこでこの記事では持っていればお得度が増すような3銘柄をご紹介いたします。
イオン㈱【8267】
イオンは1926年設立、1974年に上場した大手流通グループである「イオングループ」の持株会社であり、
- 大型スーパー
- 金融
- 不動産
等の事業も展開しています。
決算期は2月で株主優待は通常の株主優待と長期保有株主優待制度を用意していますが、お得なのは100株以上保有していた際に得られる「オーナーズカード」です。
この「オーナーズカード」はイオンで買い物をする際に提示すると保有株式に応じて購入金額の数%が4月もしくは10月にキャッシュバックされる制度となっております。
使えば使うほど後々のキャッシュバック時期に使った金額の数%が返ってくるため、日頃イオンで買い物をされる方にとってはお得な銘柄と言えるでしょう。
ANAホールディングス㈱【9202】
次におすすめしたいのが国内定期航空運送事業社の中で国内線・国際線ともに首位を独占するこちらの銘柄です。
決算期は3月で他の銘柄と優待権利取得時期が被ることがネックですが、国内旅行に多く行かれる方にとっては全路線「片道普通運賃の50%」で搭乗券を購入することができます。
また、
- ANAグループ各社
- 提携ホテル
- 空港内売店
での買い物が10%割引になるなど非常に享受できるメリットが多いのもこの銘柄の株主優待の魅力です。
㈱スタジオアリス【2305】
最後にご紹介したいのが子供写真撮影店の最大手であるこちらの銘柄です。
直近決算期は2月ですが、こちらの企業は14カ月決算と非常に珍しい決算方法を採用しているのが特徴です。
株主優待は株主写真撮影券(選べるフレーム付)となるため、子供がいらっしゃる方には記念写真を撮ってもらうのに重宝すると思います。
以上、どのタイミングで購入してもメリットがあるような銘柄のご紹介でした。
次項ではもう少し尺度を拡げて月別で代表的な企業の株主優待を見ていきたいと思います。
月別おすすめ株主優待
【1月】㈱ミサワ【3169】
デザイン性の高いオリジナル家具、オリジナル雑貨を販売する「unico」等を運営する企業であり、300株以上保有していると株主優待では自社製品の15%割引券や5,000円相当の品を受け取ることができます。
なお、現在(2018年4月3日時点)株価は428円と比較的手の出しやすい水準にあり、約10万円前後の投資金額で株主優待を受けることができます。
また、ベッドなどの高価な家具に割引券を使うことで利回りは10%以上にすることも可能なため、直近で引っ越しや模様替え等で家具の買換えの検討中の方にはお得な銘柄です。
【2月】㈱ビックカメラ【3048】
㈱ビッグカメラは創業30年を超え、各都市に販売店網を持つ家電量販店です。
こちらは直近年2回の株主優待を提供しており、保有株式及び保有期間に応じてビックカメラやコジマで使えるお買物券が最大で年5万円分もらえます。
最低優待権利取得条件は100株保有であるため、こちらは約20万円前後の投資金額からとなりますが、長期保有前提で少しずつ保有株式数を増やしていくのに向いている銘柄です。
【3月】㈱コロワイド【7616】
3月が決算期である企業は多数存在しますが、その中でも株主優待という観点ではこちらの銘柄が一押しです。
この企業の株主優待を受けるには株式保有数が500枚以上(投資金額約125万円前後)必要であり、非常に敷居が高く感じられますが1回優待ポイント1万円分を年4回受け取ることができるため、これだけで3%前後の利回りを確保できます。
また、このポイントはコロワイドが経営する
- 「甘太郎」
- 「ラ・パウザ」
- 「虎之介」
以外にも
- 「かっぱ寿司」
- アトム【7412】
が展開する飲食店でも利用できることから投資金額に見合った優待を受けられる銘柄の一つと言えます。
【4月】㈱グッドコムアセット【3475】
㈱グッドコムアセットは都内を中心に新築マンションの企画・開発・販売を行っている企業であり、自社ブランドマンション「GENOVIAシリーズ」を中心に展開しています。
株主優待は100株以上保有で年2回各2,000円分のQUOカードを受け取ることができます。
株価は2,000円前後であるため、年利約2%となりますが、使い勝手の良いQUOカードをもらえるというところがおすすめポイントとなります。
【5月】㈱クリエイトSDホールディングス【3148】
㈱クリエイトSDホールディングスは主に関東圏にドラッグストアや調剤専門店を有する企業です。
そして株主優待は株式保有数に応じて500円相当の買物優待券が複数受け取れるため(3枚:1,500円分~)、生活圏内にクリエイトSDがある方にとっては重宝するのではないでしょうか。
【6月】㈱小僧寿し
㈱小僧寿しは持ち帰り寿司の製造・販売ならびにフランチャイザーとして全国展開する企業であり、株主優待は保有株式数500株以上で10,000円相当分の割引券を受け取れることができます。
なお、こちらでは不採算店舗を縮小していく過程で現在株価が80円前後となっているため、500株購入しても40,000円程度でこの優待を受けられることから非常に利回りの高い銘柄となっております。
ただし、株価が低い企業はそれだけ業績が低迷しているとも取れるため、あくまで株主優待の権利取得期間の売買を行った方がリスクは少ないでしょう。
【7月】ダイドーグループホールディングス㈱【2590】
ダイドーグループホールディングス㈱はダイドードリンコやたらみの持株会社であり、飲料品メーカーとして有名な企業です。
株主優待は100株以上の株式保有者に自社製品3,000円相当分を年2回提供しております。
現在株価は6,000~7,000円であるため年利換算すると1%くらいの利回りですが、普段自動販売機等で購入しているドリンクが贈られてくるのは株主優待ならではだと思いますので一度挑戦してみてはいかがでしょうか。
【8月】㈱高島屋【8233】
株一株高島屋は大阪府大阪市中央区難波に本社を置く百貨店です。
株主優待は保有株式数1,000株以上で高島屋でのお買い物が10%割引となる件が年2回受け取れます。
この株主優待の良いところは高島屋で購入するもの自体が高価なものであるケースが多いため、10%割引でも相当なメリットになることです。(ただし、一部の店舗では利用できない旨が書かれています。)
【9月】ヒロセ通商㈱【7185】
ヒロセ通商㈱は外国為替証拠金取引(FX)の会社ですが、株主優待は意外にも自社オリジナルキャンペーン商品です。
この自社オリジナルキャンペーン商品とはヒロセ通商でFX取引をされている方はご存知かと思われますが、定期的に
- ステーキ肉
- インスタント食品
- 野球のチケット
等が当たるキャンペーンが行われています。
株主優待ではFX取引をしていなくても100株以上保有していることで10,000円相当の商品をもらえることから4%前後の利回りになることが期待されます。
【10月】㈱神戸物産【3038】
神戸物産は業務用の食材を販売している「業務スーパー」を直営・フランチャイズ展開している企業です。
株主優待は株式保有数に応じてもらえる業務スーパー買物優待券もしくは自社製品ですが、当社の製品は基本的にとにかく量の割に価格が割安な物が多いため、日々の生活圏に業務スーパーがある方にとっては非常に便利な株主優待でしょう。
【11月】㈱ネクスグループ【6634】
㈱ネクスグループは無線通信機器の開発を主軸にM2Mを用いて農業や介護分野でシステム開発を行う企業です。
株主優待は100株以上保有している場合、当社のグループ会社経由で旅行の予約を行うと
- 国内旅行であれば5,000円
- 海外旅行であれば10,000円
を旅行費用から割引してくれます。(ただし、税抜10万円以上の利用に限る。)
さらに、㈱ネクスグループが提携する温泉旅館の宿泊についても10%割引されるため、旅行好きにはメリットの大きい株主優待となっております。
【12月】GMOインターネット㈱【9449】
GMOインターネット㈱は証券口座でもよく見るGMOクリック証券やレンタルサーバー等の運営を行うインターネット関連事業社です。
株主優待は100株以上保有で
- 年に2回GMOグループのサービスで使える5,000円分キャッシュバックの権利
- GMOクリック証券で株式売買時の手数料5,000円分キャッシュバックの権利
- GMOが提供するクーポン共同購入サイト「くまポン」で利用できるギフト券2,000円分
がもらえます。
このため、年間保有していると24,000円分のメリットがあるため、年間利回りは10%前後となります。
株主優待の権利取得のための売買手数料もこちらの株主優待で賄えてしまうため、非常におすすめの銘柄となります。
自分に合う株主優待を探す方法
前項では各月のおすすめ銘柄について見ていただきましたが、興味を持たれたものや全く関心がなかったもの様々だったと思われます。
これは結局あなたの生活で使えそうなもの・使えなそうなものがはっきり分かれてしまうためであり、全ての事象に無関心な人にとって株主優待は単なるおまけにすぎません。
ただし、人はそれぞれ興味がある分野があると思いますし、それを満たしてくれるような株主優待は上記の中になくても他の銘柄にはきっとあるはずです。
株式投資の醍醐味が人それぞれであるように株主優待の良し悪しも人それぞれであるため、自分に合う株主優待を探す方法としてはご自身の趣味に関連する分野であったり、ご自身の生活圏内にある企業に目を向けたりすることで見つかるはずです。
年に多くても2回しかないチャンスを見逃さないよう常日頃から自分の身の回りの物にも関心を持つことが自分に合う株主優待を見つける最短の道になるでしょう。
最後に
今回は株主優待の実践編ということで具体的な企業名を挙げながらの説明となりましたがいかがでしたでしょうか。
今回は15社程度の企業の株主優待をご紹介させていただきましたが他にも株主優待を行っている企業は多数存在します。
また、全般的な投資方法から見ても株主優待は他の先物取引や証拠金取引等にはない制度であるため、プラスアルファのお得感を感じることができるはずです。
日頃トレードされていない方はもちろん、デイトレードなどで収益をあげている方もたまには自分の興味のある「おまけ」を探すような株式投資を行うのもいいのではないでしょうか。