口座開設が済んだら早速株式投資を・・・と考え、銘柄を選び始めるかもしれませんがここでは少しエントリーの仕方を解説していきたいと思います。
「え、エントリーって言っても買うだけでしょ!?」
とお思いの方、株式投資は買って配当を狙うスタイルや安い時に買って高い時に売ってのキャピタルゲイン狙いを繰り返すだけではありません。
では他にどんな方法で利益を得ることができるのかについて今回はご説明させていただきます。
空売りとは?
買いからエントリーする以外の方法は当然「売り」からエントリーしかありませんね。
では、持ってない株式を売りからエントリーする方法とは、ということが今回のテーマである「空売り」となるため、こちらでその概要を見ていきましょう。
「空売り」とは取引している証券会社から資金や株券などを借りて売りからエントリーをする信用取引の一種です。
通常の株取引は「現物取引」と呼ばれますが、こちらはご自身が証券会社に預けた「委託証拠金」の範囲内で株券を借りて当該株券を売却し、株価が下落したところで決済を行う手法であるため、「信用取引」と呼ばれます。
このため、過熱した株式相場でもうこれ以上株価が上がらないと判断した場合は下がるまで待たずに「空売り」を行って利益をあげることができます。
なお、FX(外国為替証拠金取引)の経験がある方は買い(Long)もあれば売り(Short)もあるため、イメージをしやすいと思いますが株式投資の「空売り」についても同じ考え方に基づいて行われております。
空売りも含めた信用取引のメリット・デメリット
メリット
信用取引のメリットは上述の通り「株券を持っていなくても売りエントリーができる。」ということだけではありません。
信用取引の魅力はご自身が預けた証拠金にレバレッジをきかせて数倍の投資余力を持てることです。
取引している証券会社によって異なりますが、一般的に株式投資で信用取引を行うと証拠金の約3倍の資金分の売買を行うことができるため、投資を行ううえで資金効率を上げることができ、使いようによっては一回のトレードの利益を増やすことができます。
しかし、当然利益を増やすことができるということは反対に損失も大きくなる可能性があることを忘れないで下さい。
また、「空売り」では株券を証券会社から「借りて」売りからスタートし、買いで決済することになります。
このためデメリットとして、株券を借りている間は「貸株料」を払う必要があります。
さらに、予想に反して株価が高騰した場合は当然損失が拡大していきますし、株価が理論上青天井であることに伴い最大損失額も無限となることにも注意です。
貸株料の水準を決める「一般信用取引」と「制度信用取引」について
「空売り」を行う際にかかる費用である貸株料については更に細かく見ていくと借りる対象である株式が「一般信用取引」と「制度信用取引」という2種類の信用取引のどちらが採用されているかで水準が異なってくるため、ここでは「一般信用取引」と「制度信用取引」の概要について見ていきましょう。
「一般信用取引」とは
一般信用取引とは投資家と証券会社の間で行われる契約であり、ご自身が取引されている証券会社によって貸株料や貸株期間等の条件が異なります。
また、最近では1日の間に売買を完結させるデイトレーダー向けに当日中に決済を行えば貸株料はかからないような条件の証券会社も出てきているため、信用取引をメインに行うことを考えられている方は貸株料の水準が低い条件の証券会社で取引を行うようにしましょう。
「制度信用取引」とは
制度信用取引とは証券取引所が公表している制度信用銘柄選定基準を満たした銘柄のみを対象として行われる信用取引のことです。
つまり、証券会社ではなく証券取引所の選定基準を満たした株券についてはこちらの信用取引を行うことができ、貸株料の水準も一般信用取引よりも低めになっているため、一般信用取引よりも好条件で取引を行うことができます。
ただし、取扱銘柄については証券取引所の選定基準の方が証券会社の選定基準よりも厳しいため、選べる銘柄の種類が少ないことは覚えておきましょう。
空売りのリスクについて
さて、空売りの概要がわかってきたところでここからは具体的に空売りのリスクについて改めて認識していただきたいと思います。
信用取引のメリット・デメリットでも少し触れましたが、ここでは具体例も交えて最大損失額という観点から「空買い」と「空売り」のリスクについてご説明させていただきます。
まず、株式投資でイメージしやすい「空買い」から考えていきましょう。
信用取引を利用して買いからエントリーする場合は、株価が100円のA社の株式を1,000株購入するケースでは最大損失額がマイナス10万円です。(会社が倒産して株価が0円となったとき)つまり損失額の動きは売買数量×エントリー価格からの0円までの差で求められるため、ある程度限定的となります。
一方「空売り」のリスクは同様のケースで検討すると株価は100円から理論上高騰し続けることができるため、最大損失額は無限となり、最初に預けていた委託証拠金を超えた損失を被る可能性があります。
特に株式投資においては1日に株価が上下に変動する幅を証券取引所が決めているため、ストップ高が続く限り反対売買も行うことができず、損失が拡大していくのをただ見ることしかできない状況もあり得ます。
また、空売りならではの費用として他にも「特別空売り料」や「逆日歩」がかかるケースもあります。
「特別空売り料」とは一般信用取引において貸出元である証券会社が株券の調達が困難な銘柄の売建取引に対して1株あたり1日にかかる費用のことを指します。
更に証券会社は貸し出す株券を自社が保有する以上に空売り注文が入った場合、通常「日本証券金融株式会社」から貸す株を調達しますが、日本証券金融株式会社が保有している株券でも対応しきれないような数量の注文があった場合は銀行等の機関投資家等から株を調達することになるため、証券会社は機関投資家に対して株の借り料を支払う必要があります。
その借り料について空売りを行っている投資家に対して求める手数料を「逆日歩」と呼びます。
このことから非常に「空売り」はハイリスクな取引であるため、仕掛ける場合は証拠金や手元の余裕資金をよく考えて、
- 「どこまで株価が上がってしまったらロスカットするのか」
- 「最大何日売建注文を保有するか」
を決めてから取引に臨まないと危険だということを肝に銘じておきましょう。
空売りできる銘柄・できない銘柄について
ここまでこのコラムを読んでいただいた方には「そんなに空売りが危険ならしなきゃいいのでは?」と考えられていると思います。
当然リスクを考慮したうえで「やらない」という選択肢を取ることは自分の資産を守るために重要な判断だと思います。
しかし、これから専業トレーダーとして取引をしていきたいと思われている方は「空売り」は必須取引方法です。
なぜならば専業トレーダーの収入源はトレードから得た利益であるため、どんな相場でも利益を取れることが重要だからです。
このため、ここからは更に空売りにおける「対象銘柄」と「空売りできない銘柄」についてお伝えさせていただきます。
空売りできる銘柄とは
まず空売りが可能な対象銘柄として、抑えなければいけないのは上述した制度信用取引のなかで貸借銘柄に限定されます。
貸借銘柄については各証券取引所のHP内で公表されているため、必ず事前に確認するようにしましょう。
また、一般信用取引においては各証券会社が選定しているため、ご自身が取引されている証券会社によって銘柄が異なります。
このため、貸借銘柄については証券会社共通となりますが、どうしても「空売り」を行いたい銘柄が見つかったときになるべく思い通りのトレードができるように証券口座は1つに絞らず、複数の口座からエントリーできる方が望ましいです。
空売りできない銘柄とは
一方空売りできない銘柄もあります。
例えば既に上場廃止が決定されている株券やこれから新規上場する銘柄については投資家保護の観点から基本的には信用取引はできません。
(ただし、証券会社によってはIPOしたばかりの銘柄を空売りすることもできるので詳しくはご自身の証券口座の機能から確認しましょう。)
空売りが多いか見る方法
空売り可能対象銘柄が確認出来たら最後にエントリー根拠として必要な情報である現在のターゲット銘柄における空売り状況を確認しましょう。
空売り状況を見る方法は各証券会社のトレードツール内の市況情報等で「信用売り残高」や「信用倍率(貸借倍率)」から確認できます。
更に日本証券金融株式会社が各証券会社に貸出を行っている日証金残でも相場全体の空売り度を予想することは可能です。
考え方としては各証券会社や日証金残における「信用売り残高」が多く、「信用倍率(貸借倍率)」が1以下の場合は空売りが多い状態となっているため、「株価はしばらく下がり続けそうだな。」と判断するか「空売りしていた投資家が利益確定のためにそろそろ反対の買いを入れてきそうだから買いでエントリーするべきか。」といった判断をすることができ、反対に信用買い残が多いケースでは「各投資家は利益確定のために売りが多くなるから自分は空売りでエントリーをして下がったところで買い戻そう。」という戦略を検討できるため、トレード前の信用取引状況は非常に重要な作業です。
最後に
空売りの概要や信用取引のリスクについてはご理解いただけたでしょうか。
株式投資が初めての方では特に売りからトレードを行うことが不思議に思われるかもしれませんが、空売りも立派なトレード手法の一つであり、過熱しすぎた相場では非常に使える手法です。
更に信用取引の残高を気にするようになるとご自身のエントリー根拠と利益確定タイミング、更にはロスカットタイミングにも影響を与えられ、トレード結果が改善されることもあるので、
キャピタルゲイン狙いの方で特に「自分は株券を買って売ってを繰り返すだけでいい。」と考えられている方は信用取引の根底にあるターゲット銘柄の需給バランスも気にできるように空売りに挑戦してみていただけたらと思います。→初心者必見!証券口座開設の基礎知識と始めやすい証券会社3選
ただし、上述した通り空売りについてはリスクが大きく、銘柄も制限されているため、最初は対象銘柄のチャート分析と信用残高から需給バランスを予想してご自身の中できっちりターゲットとする銘柄についてはエントリーから利益確定、またはロスカットラインの水準まで検討できるようになってから信用取引に挑戦してほしいと思います。